包括遺贈とは,遺言者が,包括の名義で,その財産の全部又は一部を処分すること(民法964条)であり,包括受遺者は,相続人と同-の権利義務を有することになる(民法990条)。
通常は相続分(民法899条)に対応する相続財産の割合的一部を指定して,その範囲に属する積極財産(財産)のみならず消極財産(負債)を包括して遺贈する形式が求められることとなる。
ところで,遺言者がその財産の一部を特定遺贈又は分割方法の指定により特定人に取得させることとした上,その部分を除く相続財産につき,積極財産のみならず消極財産を包括して,遺贈の対象とすることも可能というべきであり,この場合には,「財産の一部」についての遺贈であるが,当該財産の範囲で,受遺者は被相続人の権利,義務を包括的に承継することになるから,「特定財産を除く相続財産(全部)」という形で範囲を示された財産の遺贈であっても,それが積極,消極財産を包括して承継させる趣旨のものであるときは,相続分に対応すべき割合が明示されていないとしても,包括遺贈に該当するものと解するのが相当であるとした裁判例がある(東京地裁平成10年6月26日判決。事件番号平成8年(行ウ)第109号事件)。